首・肩の症状
首や肩の痛み、こり、しびれは多くの方が経験する身近な症状です。しかし「よくあることだから」と放置すると、症状が慢性化したり、神経の圧迫が進行して手のしびれや筋力低下を招いたりすることがあります。
首・肩の症状にはさまざまな原因があり、原因によって治療法は異なります。まずは正確な診断を受けることが、改善への第一歩です。
首の疾患
・頸椎症(けいついしょう)
・頸椎椎間板ヘルニア
・頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)
・寝違え(急性頸部痛)
・むち打ち症(頸椎捻挫)
肩の疾患
頸椎症(けいついしょう)
頸椎症とは、加齢により首の骨(頸椎)や椎間板(骨と骨の間のクッション)が変形し、神経を圧迫する病気です。中高年の方に多く見られ、進行すると手や腕のしびれ、筋力低下を引き起こすことがあります。
原因
加齢に伴い、頸椎の骨や椎間板は少しずつ変形していきます。骨に骨棘(こつきょく)と呼ばれるトゲのような突起ができたり、椎間板がつぶれて薄くなったりすることで、脊髄や神経根が圧迫されて症状が現れます。長年のデスクワークや不良姿勢が進行を早めることもあります。
症状
首の痛みや動かしにくさ、慢性的な肩こりが代表的な症状です。神経が圧迫されると、手や腕のしびれ、手に力が入りにくいといった症状も現れます。進行すると、箸が使いにくい、ボタンがかけにくいなど、手先の細かい作業に支障が出ることがあります。
治療法
薬物療法(消炎鎮痛薬、神経の痛みを和らげる薬、筋弛緩薬など)、注射療法(神経根ブロック、トリガーポイント注射)、リハビリテーション(ストレッチ、筋力強化、姿勢改善)を組み合わせた保存的治療が基本です。リハビリでは理学療法士が一対一で、首周りの筋肉をほぐし、正しい姿勢を身につけるための指導を行います。症状が重い場合や保存的治療で改善が見られない場合は、専門の医療機関をご紹介し、手術を検討することもあります。
日常生活での注意
加齢による変化を完全に防ぐことは難しいですが、日頃から首への負担を減らすことが進行の予防につながります。デスクワーク中はパソコン画面を目の高さに合わせ、1時間に1回は首や肩を動かす休憩を取りましょう。首周りの筋力を維持するための適度な運動も大切です。
頸椎椎間板ヘルニア
頸椎椎間板ヘルニアとは、首の骨と骨の間にある椎間板(クッションの役割をする組織)の中身が飛び出し、神経を圧迫する病気です。30〜50歳代に多く発症します。
原因
椎間板は加齢とともに弾力を失い、傷みやすくなります。そこに長時間の不良姿勢や首への強い負荷が加わることで、椎間板の中にある髄核が外に飛び出し、脊髄や神経根を圧迫します。スポーツや交通事故などの外傷がきっかけになることもあります。
症状
首の痛みに加え、片側の肩から腕、手にかけての痛みやしびれが特徴的です。首を後ろに反らしたり、横に傾けたりすると症状が強くなることがあります。進行すると手に力が入りにくくなり、物を落としやすくなったり、細かい作業がしづらくなったりすることがあります。
治療法
多くの場合、薬物療法(消炎鎮痛薬、神経の痛みを和らげる薬)、注射療法(神経根ブロック)、リハビリテーション(首周りの筋力強化、姿勢指導、牽引療法)などの保存的治療で改善します。保存的治療で改善しない場合や、手の筋力低下が進行する場合は、専門の医療機関をご紹介し、手術を検討します。
日常生活での注意
首を過度に反らす動作はできるだけ避けましょう。デスクワーク時は前かがみの姿勢が長時間続かないよう注意し、スマートフォンは目の高さに持って使うことを心がけてください。症状が落ち着いてきたら、首や肩周りの筋力を強化するリハビリを継続することが再発予防に有効です。
頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)
頸肩腕症候群とは、首から肩、腕にかけての痛みやこり、しびれが慢性的に続く状態の総称です。レントゲンやMRIで明らかな異常が見つからないにもかかわらず、つらい症状が続くのが特徴です。
原因
長時間のデスクワーク、スマートフォンの長時間使用、不良姿勢、ストレス、運動不足、眼精疲労などが原因となります。同じ姿勢を長時間続けることで首や肩の筋肉が過度に緊張し、血行が悪くなって症状が現れます。
症状
首から肩、腕にかけてのこりや痛み、だるさが主な症状です。手のしびれ、頭痛、めまい、吐き気を伴うこともあります。午後から夕方にかけて症状が悪化しやすく、休日には軽くなる傾向があります。
治療法
薬物療法(消炎鎮痛薬、筋弛緩薬)で痛みを和らげながら、リハビリテーションで筋肉の緊張をほぐし、姿勢を改善していきます。生活習慣そのものが原因であるため、治療と並行して日常生活の見直しが不可欠です。
予防・生活習慣の改善
この疾患は生活習慣の改善が治療の中心と言っても過言ではありません。デスクワーク中は1時間に1回は立ち上がって首や肩を動かす、スマートフォンを目の高さに持つ、ウォーキングや水泳などの全身運動を週に2〜3回取り入れる、といったことを意識してみてください。エアコンによる冷えも筋肉の緊張を強めるため、夏場でも首や肩を冷やさない工夫が大切です。
寝違え(急性頸部痛)
寝違えは、睡眠中の不自然な姿勢などが原因で、朝起きた時に首が痛く動かせなくなる状態です。正式には急性頸部痛と呼ばれ、首の筋肉や関節に急性の炎症が起きています。
原因
睡眠中に首が不自然な角度で固定されることで、首の筋肉や靱帯、小さな関節(椎間関節)に負担がかかり、炎症が起こります。疲労の蓄積、枕が合っていないこと、冷えなども原因になります。
症状
朝起きた時に突然首が痛くなり、特定の方向に動かすと強い痛みが走ります。首を回せない、傾けられないなど、動きが大きく制限されることが特徴です。通常は片側に症状が出ます。
治療法
多くの場合、数日から1週間程度で自然に改善しますが、痛みが強い場合は消炎鎮痛薬や筋弛緩薬、トリガーポイント注射などで痛みを和らげます。急性期は無理に動かさず安静にすることが大切です。なお、痛みが1週間以上続く場合や手にしびれがある場合は、椎間板ヘルニアなど他の病気の可能性がありますので、ご受診ください。
予防
自分に合った高さの枕を使うことが最も効果的です。高すぎる枕・低すぎる枕はどちらも首に負担をかけます。また、就寝前に首や肩のストレッチを行うこと、首を冷やさないようにすることも寝違えの予防につながります。疲労が溜まっている時は特に起こりやすいため、日頃の体調管理も大切です。
むち打ち症(頸椎捻挫)
むち打ち症とは、交通事故や衝突などの衝撃で首が強く前後に振られ、首の筋肉や靱帯、神経を損傷する状態です。正式には頸椎捻挫・外傷性頸部症候群と呼ばれます。
原因
追突事故などで、首が急激にしなるように前後に動かされることが主な原因です。スポーツでの衝突や転倒でも起こることがあります。事故直後は症状が軽くても、数時間〜数日後に症状が強くなることが特徴です。
症状
首の痛み、動かしにくさ、肩こり、頭痛、めまいが主な症状です。手のしびれ、吐き気、倦怠感を伴うこともあります。症状は事故後しばらく経ってから現れることが多いため、「大したことない」と思い込みやすい点に注意が必要です。
治療法
早期に適切な治療を開始することが非常に重要です。受傷直後は安静と消炎鎮痛薬で炎症を抑え、その後リハビリテーション(筋肉をほぐすストレッチ、可動域訓練、筋力強化)を段階的に進めていきます。早期治療が遅れると慢性化するリスクが高まります。交通事故の場合、自賠責保険での治療が可能です。詳しくは「交通事故治療」のページもご覧ください。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
肩関節周囲炎は、いわゆる「四十肩」「五十肩」と呼ばれる病気で、肩の関節を包む関節包や周囲の組織に炎症が起き、肩が痛くなり動かしにくくなる病気です。40〜60歳代に多く発症します。
原因
はっきりとした原因は分かっていませんが、加齢に伴い肩関節の周囲の組織(関節包、腱、靱帯)が傷んで炎症を起こすことが主な原因と考えられています。糖尿病のある方や、肩を使わない生活が続いた方に起こりやすい傾向があります。
症状
肩の痛みと動きの制限が主な症状です。特に夜間に痛みが強くなり、眠れないこともあります。腕を上げる、背中に手を回す、服を着る、髪を洗うといった日常動作が困難になります。一般的に「炎症期(強い痛み)」→「拘縮期(動きの制限)」→「回復期」の経過をたどります。
治療法
時期に応じた治療が重要です。炎症期は消炎鎮痛薬や肩関節への注射(ヒアルロン酸、ステロイド)で痛みを和らげることを優先します。拘縮期から回復期にかけては、リハビリテーション(関節の可動域を広げるストレッチ、肩甲骨の動きを改善する運動、筋力強化)が治療の中心になります。「痛いから動かさない」ことが拘縮を悪化させるため、適切な時期に適切な運動を行うことが回復の鍵です。
治療中の生活について
炎症期は無理に動かさず安静を保ちつつ、痛くない範囲で肩を完全に固定しないことが大切です。夜間の痛みがつらい場合は、抱き枕やクッションで腕を支えると楽になることがあります。拘縮期以降は、お風呂で体を温めた後に医師や理学療法士から指導されたストレッチを毎日続けることが、回復を早める一番のポイントです。
腱板損傷(けんばんそんしょう)
腱板損傷とは、肩の腱板(肩関節を安定させる4つの筋肉の腱が集まった組織)が切れたり傷んだりする病気です。中高年の方に多く見られますが、スポーツや仕事で肩を酷使する方にも起こります。
原因
加齢により腱板が徐々にもろくなり、日常生活の動作や軽い外力で損傷するケースが最も多く見られます。転倒して手をついた時や、重い物を持ち上げた時に急に切れることもあります。野球やテニスなど肩を繰り返し使うスポーツが原因になることもあります。
症状
肩の痛み、腕が上がらない、夜間の痛みが主な症状です。腕を上げる途中で引っかかるような痛みを感じることがあります。自力では腕を上げられないのに、反対の手で支えると上がるという特徴的な所見が見られることもあります。五十肩と症状が似ていますが、治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
治療法
損傷の程度によって治療法が異なります。部分的な損傷(不全断裂)の場合は、薬物療法(消炎鎮痛薬)、肩関節への注射(ヒアルロン酸、ステロイド)、リハビリテーション(残っている腱板や周囲の筋肉を強化する運動)で症状が改善することが多いです。完全に断裂している場合や、保存的治療で改善しない場合は、専門の医療機関をご紹介し、手術を検討します。
肩こり
肩こりは、首から肩、背中にかけての筋肉が緊張し、こり、痛み、重だるさを感じる状態です。非常に多くの方が悩んでいる症状ですが、他の病気が原因で起きている場合もあるため、症状が長引く場合は一度検査を受けることをおすすめします。
原因
長時間の同じ姿勢(デスクワーク、スマートフォンの使用)、運動不足、ストレス、眼精疲労、冷えなどが主な原因です。これらの要因で首や肩の筋肉が持続的に緊張し、血行が悪くなることで、こりや痛みが生じます。また、頸椎症や頸椎椎間板ヘルニアなどの病気が肩こりの原因になっていることもあります。
症状
首から肩、背中にかけてのこり、張り、重だるさ、痛みが主な症状です。ひどくなると頭痛、めまい、吐き気、目の疲れ、集中力の低下などを伴うこともあります。
治療法
薬物療法(消炎鎮痛薬、筋弛緩薬、湿布)、トリガーポイント注射、リハビリテーション(筋肉をほぐすストレッチ、筋力強化、姿勢改善指導)などで治療します。他の病気が原因の場合は、その治療を優先します。
予防・セルフケア
肩こりは日々の習慣で予防・軽減できる部分が大きい症状です。デスクワーク中は1時間に1回立ち上がって肩を回す、首をゆっくり前後左右に倒すストレッチを行うなど、こまめに筋肉をほぐしましょう。ウォーキングや水泳といった全身運動は血行を改善し、筋肉の緊張をやわらげる効果があります。入浴時に首や肩をしっかり温めること、夏場のエアコンで体を冷やしすぎないことも大切です。ストレスも筋肉の緊張を強める原因になりますので、自分なりのリラックス法を持つことも肩こり予防につながります。
よくあるご質問
Q1. 肩こりでも整形外科に行っていいですか?
A. はい、もちろんです。肩こりも立派な症状です。特に、長く続く肩こり、痛みやしびれを伴う肩こりは、病気が隠れていることがあります。
Q2. 湿布だけもらうことはできますか?
A. 症状が軽い場合は可能ですが、定期的に診察を受けることをお勧めします。症状の変化を見逃さないことが大切です。
Q3. マッサージと整形外科、どちらに行けばいいですか?
A. まずは整形外科で診断を受けることをお勧めします。原因が分かれば、適切な治療ができます。マッサージが有効な場合もあれば、逆効果になる場合もあります。
Q4. リハビリは痛いですか?
A. 痛みを我慢するようなリハビリはしません。「気持ちいい」「少し伸びる感じ」程度の強さで行います。
Q5. 枕はどんなものがいいですか?
A. 人によって最適な枕は違います。診察時に姿勢や首のカーブを確認し、アドバイスします。
Q6. 仕事が忙しくてリハビリに通えません
A. 予約の必要がない物理療法機器もあります。また、自宅でできるセルフケアも指導します。無理のない治療計画を一緒に考えましょう。
Q7. 治療費はどのくらいかかりますか?
A. 保険診療ですので、3割負担の方で初診時2,000〜3,000円程度、再診時は1,000〜2,000円程度です。(検査内容により変動します)
首・肩の症状でお悩みの方へ
首や肩の痛み、こり、しびれは、「よくあること」「我慢すればいい」と思われがちですが、放置すると症状が悪化したり、日常生活に大きな支障をきたしたりします。
また、まれではありますが、重大な病気が隠れていることもあります。
当院では、首・肩の症状に対して、正確な診断と適切な治療を行っています。薬物療法、注射療法、リハビリテーションなど、患者様の症状や生活に合わせた治療をご提案します。
「いつもの肩こり」だと思っていた症状が、実は治療できる病気だった、ということもよくあります。
つらい症状を我慢せず、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に症状の改善を目指しましょう。
